症状緩和目的の放射線治療

症状緩和目的の放射線治療

定位放射線治療強度変調放射線治療などの高精度放射線治療は転移のないがん患者様の根治を目指す目的で行われることが多く、進行がんでもすべて完治できるという夢の治療ではありません。
これは、高度先進医療で行われている陽子線・粒子線治療や、多くの進行がん患者さんが行っている抗がん剤治療も同様で、すべてを完治できる治療法ではありません。
しかし、放射線治療が進行がん患者さんにできることはたくさんあります。
がんに対する治療効果は、当てた範囲に限れば、放射線治療は抗がん剤よりもがんを縮小できる可能性が高いことが知られています。ただし、広範囲に放射線治療を当てると、少量の放射線でも副作用が強く出てしまい、転移の病巣すべてに放射線を同時に当てることは不可能で根治治療はできません。
では、転移のある人に対して放射線はどのようなことができるのでしょう。
患者さんの中には、がんは痛くて、苦しくて大変だという思いをされたことがある人もいれば、そのような経験をしたことがない人もいると思います。
髪の毛が抜けた、気持ちが悪くて食欲がない、風邪をひきやすくなったなどの症状の多くは、がんの症状ではなく抗がん剤の副作用と考えられます。がんの症状に恐怖を覚えている人も多いと思いますが、実はがんそのものの症状はかなり進行しないと出ない場合が多いのです。
がんはそれ自体や転移が大きくなって臓器を押したり、骨を折ったり、神経を押したりしてつらい痛みなどの症状を出します。
全身の骨に転移があっても痛いのは腰だけで、調べてみたら、骨転移の一つだけがたまたま神経を押していたということがよくあります。
また、腫瘍が、食道を圧迫してご飯が通らなくなったり、空気の通り道を圧迫して息苦しくなったりすることもあります。
このようなとき、痛みの原因、食べられない原因、息苦しさの原因の病巣のみに放射線を当てるとどうなるでしょうか?
これらの病変は放射線治療で高い確率で縮小し、縮小とともに症状は取れていきます。他の病巣に治療しなくても、症状は取れてしまい普通の生活が送れるの です。このような放射線治療を緩和照射といいます。実際に骨転移の痛みについては放射線治療単独で80%以上の人で軽減することが知られています。
緩和照射の場合、新たな症状をつくってしまっては意味がないので、副作用の出ない工夫をし、通院回数も1回から10回程度と通院の負担を少なくすることが可能です。
大病院などで治療法がないとされ在宅にて療養されている患者様でも、がんが原因の痛みがある場合には、数回の治療のための通院が可能であれば外来で治療可能です。当然保険診療の範囲内で治療可能です。
また、早期がんであるにも関わらず、高齢や合併症のため手術や抗がん剤治療ができないと言われた場合でも、放射線治療は副作用が少ないため治療可能な場合があります。
当放射線治療センターでは、転移のある患者さん、高齢や合併症のため他の治療が困難と言われた患者さんについても放射線治療でできることがないかどうか、今ある痛みは放射線で取れるのかなど放射線治療についてのご相談を受け付けております。ご希望がございましたら、主治医の先生とご相談の上、治療経過のわかる紹介状とCT、MRI等の画像や採血データ等を用意いただき外来予約をしていただければ幸いです。
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