高精度放射線治療について

高精度放射線治療について

当院は高精度放射線治療装置であるノバリスTxを導入しております。
当院にて施行可能な高精度放射線治療は、 の3種類で、ノバリスTxは汎用の放射線治療装置に比べて高精度な治療が可能な装置です。
高精度とは精度が高いという意味で、当てたい所に放射線がきちんと当たり、当てたくない所の放射線を減らすことが可能であるということです。高精度であれば、どんながんや腫瘍でも根治可能というわけではなく注意が必要です。

画像誘導放射線治療(IGRT)とは

従来の放射線治療は治療計画用のCTを撮影するとき、放射線治療を行う位置の中心の座標の皮膚に線を引いて放射線を当てる位置を決めていました。しかし、皮膚は姿勢のずれ、履いているパンツのゴムの強さの違いだけでも数mm~数cmずれてしまうことがあります。
従来の放射線治療では、腫瘍だけでなく、ずれの起こる可能性のある範囲を十分に含めた範囲に放射線を当てていました。そのため、周囲の臓器に影響が出やすく、副作用の原因となっていました。
ノバリスTxは、放射線治療装置の他に体の位置のずれを測定する赤外線マーカー、X線装置、簡易CTなどによりずれを確認し、体のずれの自動位置補正が可能な治療用寝台を搭載しています。呼吸などの生理現象や体の固定の毎日の違いなどで、腫瘍の位置がずれてしまうような場合には、これらの装置を使用し位置のずれを修正してから放射線を当てることも可能です。画像を利用して腫瘍の位置を同定することから画像 誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radiation Therapy)といわれています。
当院では、高精度治療のみでなく通常の放射線治療にもIGRTを採用し、治療精度の向上に努めていきます。
赤外線カメラとX線にて体位を確認し自動でベットが動き位置合わせをする様子

定位的放射線手術・定位的放射線治療(SRS・SRT)とは

定位的放射線手術、定位的放射線治療とは、いわゆるピンポイント照射といわれる治療法です。治療回数が1回の場合を定位的放射線手術(SRS:stereotactic radiosurgery)、数回に分けて治療する場合を定位的放射線治療(SRT:stereotactic radiotherapy)といいますが、基本的に違いは回数のみです。
定位的放射線治療は通常1~10回程度の治療回数で行われます。
ピンポイント照射とはその名の通り、ピンポイント(点)への治療です。これは脳腫瘍、早期肺がん、早期肝臓がん、転移性脳腫瘍、転移性肺腫瘍、転移性肝腫瘍等で、特に小さい病気(ピンポイント:点)に対して多方向から集中的に放射線を当てることで病変周囲に通常の放射線治療の十数倍もの大線量の放射線を当てて治療していきます。ピンポイント(点)の大体の目安としては、おおむね 3~4cm以下の病変までと考えております。
この治療により、従来手術でしか根治できないと思われていた脳腫瘍、早期肺がん、早期肝臓がんで手術に近い治療効果が得られることがわかってきています。また、解剖学的に手術が難しい場所の腫瘍でも治療ができる場合があります。
転移性脳腫瘍、転移性肺腫瘍、転移性肝腫瘍などの他のがんからの転移の場合にも治療適応となりますが、この治療の効果は照射した病変にしか得られません。
よって、原発巣は手術で取ったけれど肺や肝臓のみに転移が出てきた場合や、症状のない数個の脳転移が見られた場合等に行われます。
他の臓器にもがんが転移している、原発巣の治療がうまくいっていないなどのときに無理に転移に対するピンポイント照射を行ってもメリットがない場合も多く、何が何でもピンポイント照射を行えばいいというものではありません。
転移のある患者様で、自分の場合には放射線治療が有効なのかどうか、ピンポイント治療ができるかどうかなど、放射線治療医の意見が聞きたい場合には主治医の先生と相談いただき、今までの治療内容や経過のわかる紹介状およびCTやMRI等の画像を準備し、お気軽に放射線治療センター外来を予約受診いただければと考えております。当院では、適応がないのに無理に放射線治療をお勧めすることはありません。
早期肺がんに対する多方向からのピンポイント照射
呼吸で動く肺がんや肝臓がんは呼吸に合わせてピンポント照射できます

強度変調放射線治療(IMRT)とは

強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiation Therapy)は、リンパ節転移など少し進行しているが遠隔転移のないがんや、近くに放射線に弱い直腸などの正常臓器がある前立腺がんなどで行われます。
広い範囲に放射線を当てる場合や、当てたい場所の近くに放射線に弱い臓器がある場合に、多方向から強さを調節した放射線を分散させて当てることで、周囲の臓器の影響を従来の放射線治療よりも少なくしていきます。
1回の治療で、がんに当たる放射線の量は通常の放射線治療と同等な場合がほとんどですが、副作用が減るため放射線治療を行う回数を通常より増やし、がんに当たる放射線の合計量を増やして完治の可能性を上げることも可能です。
IMRTでは通常の放射線治療と同様に20~40回程度の治療回数で治療していきます。
当院では、脳腫瘍、前立腺がん、一部の症状緩和目的の放射線治療で行います。
ノバリスTxは、IMRTに回転照射を加えたRapidArcという最新の強度変調放射線治療にも対応しております。
IMRTでの前立腺への放射線治療(左:動画)と従来法(右:写真)の違い
赤が前立腺で緑が直腸。右の従来の方法では、前立腺の形に合わせたのみのため、直腸に治療線量がそのまま当たってしまう。
左のIMRTでは、絞りが動きながら放射線を当てるため、直腸に当たる部位は必要なだけに放射線の量を減量することができる。
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