高精度放射線治療について
『高精度』とは、精度が高く当てたい所に放射線がきちんと当たり、当てたくない部位の放射線を減らすことが可能であるということです。根治が可能な範囲のがんに対し根治の可能性を上げ、同時に副作用を減らすため、高精度放射線治療を行います。
※がんや腫瘍の種類によって、すべてが根治可能とは限りません。ご注意ください。
当院にて施行可能な高精度放射線治療
画像誘導放射線治療(IGRT)
従来の放射線治療は、治療計画時に放射線治療を行う位置の中心の座標の皮膚に線を引いて、放射線を当てる位置を決めていました。しかし、皮膚は姿勢のズレや履いているパンツのゴムの強さの違いだけでも、数mm~数cmズレてしまうことがあります。従来の放射線治療では、腫瘍と、ズレの起こる可能性のある箇所の両方を含めた範囲に放射線を当てていました。そのため、周囲の臓器に影響が出やすく、副作用の原因となっていました。
True Beam Hyper sight with Novalis Packageには「2方向のX線撮影」「簡易CT撮影による骨格や内臓の位置の確認」「赤外線とサーモグラフィによる体表面の動きの有無の確認」「ズレを6軸で補正可能な放射線治療寝台」など、多種の状態確認機能が備わっています。放射線のみでなく、様々な位置確認画像を取得して正確に病巣を狙い照射することから、『画像誘導放射線治療(IGRT)』と言われています。従来の装置と比較しても、短時間で高画質な撮像が可能となりました。
当センターでは、ハイスペックな装置の機能を患者様に提供し、正確度を高めて照射することを目指しており、正常臓器の線量低減などの効果が期待できると判断した場合には、積極的にIGRTを使用します。
また、Novalis Packageに含まれるExac Trac Dynamicでは、赤外線とサーモグラフィを用いて身体の状態を被ばくすることなくモニターすることが可能です。この装置の導入により、より正確且つ患者様の負担を減らした、これまで以上の放射線治療をご提供できると考えています。
定位的放射線手術・定位的放射線治療(SRS・SRT)
定位的放射線手術、定位的放射線治療とは、いわゆるピンポイント照射といわれる治療法です。
治療回数が1回の場合を定位的放射線手術(SRS:stereotactic radiosurgery)、数回に分けて治療する場合を定位的放射線治療(SRT:stereotactic radiotherapy)といい、照射の回数により名称が変わります。
定位的放射線治療は通常1~10回程度の治療回数で行われます。
ピンポイント照射とはその名の通り、ピンポイント(点)への治療です。これは脳腫瘍、早期肺がん、早期肝臓がん、転移性脳腫瘍、転移性肺腫瘍、転移性肝腫瘍等で、特に小さい病気に対して多方向から集中的に放射線を当てることで病変周囲に通常の放射線治療の十数倍もの大線量の放射線を当てて治療していきます。ピンポイント(点)の大体の目安としては、おおむね 3~4cm以下の病変までです。
この治療により、従来手術でしか根治できないと思われていた脳腫瘍、早期肺がん、早期肝臓がんなどで、手術に近い治療効果が得られることがわかってきています。また、解剖学的に手術が難しい場所の腫瘍にも治療ができる場合があります。
また、他のがんからの転移の場合にも治療適応となりますが、この治療は照射した病変にのみ効果が得られるものであり、原発巣に効果をもたらすわけではありません。よって、原発巣は手術で取ったけれど肺や肝臓に転移が出てきた場合や、症状のない数個の脳転移が見られた場合等にのみ行われます。
但し、「他の臓器へのがん転移が多数ある」「原発巣の治療がうまくいっていない」などのときに、転移に対するピンポイント照射を行ってもメリットがない場合も多く、何が何でもピンポイント照射を行えばいいというものではありません。転移の有無や範囲、原発巣の状態などを考慮し、有効と判断された場合に治療を行います。
これまでの装置は、複数の脳転移に対しひとつずつ治療を行うために長時間(期間)の治療が必要でしたが、新装置には「同時に複数個(おおむね10個)の脳転移治療」ができる機能が備わっています。
また、脊髄骨転移に対する定位放射線治療専用の機能も備わっており、大幅な時間短縮と共に、状態にあった治療の提供を可能にしています。
強度変調放射線治療(IMRT)
強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiation Therapy)は、リンパ節転移など少し進行しているが遠隔転移のないがんや、近くに放射線に弱い直腸などの正常臓器がある前立腺がんなどで行われます。
広い範囲に放射線を当てる場合や、当てたい場所の近くに放射線に弱い臓器がある場合に、多方向から強さを調節した放射線を分散させて当てることで、周囲の臓器への影響を少なくしていきます。
副作用が減る分、治療を行う回数を通常より増やすことで、がんに当たる放射線の合計量を増やして完治の可能性を上げることも可能です。IMRTでは、20~40回程度の治療回数で治療していきます。
当センターでは、前立腺がんや良性の脳腫瘍、膀胱癌などに対する通常のIMRTや、骨転移などに対する定位放射線治療にIMRTの技術も含んだ照射などが行われています。
新機種には、IMRTに回転照射を加えた『VMAT(回転IMRT機能)』も含まれ、照射時間の短縮が可能になっています。治療部位にきちんと放射線を当て、他は極力照射されないようにマルチリーフコリメター(MLC)と呼ばれる絞りが回転しながら動いて、周辺臓器を避けながらの照射を行います。この技術の向上により、手術同様に「選ばれる治療法」として確立しています。
IMRTを脳以外の体幹部腫瘍に行う場合、線量調整の複雑さから呼吸や心拍などの動きによる影響が懸念されます。当センターでは、呼吸停止照射(息止めをしている間に照射する方法)にExac Trac Dynamicを用いて、従来よりも呼吸の動きの影響を低減させ、正確性の高い治療を行います。