悪性腫瘍の早期発見、早期治療

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悪性腫瘍の早期発見、早期治療に努めています

腎癌・腎盂・尿管癌

腎癌の治療の基本は腎摘出となります。腎盂・尿管癌は腎尿管摘出や、膀胱癌と同様の化学療法、放射線療法を病状に応じて施行しています。比較的早 期の腎 癌に対しては、腹腔鏡下腎摘除を施行いたします。また、腎盂尿管癌にたいしては、症例に応じて、腹腔鏡下腎摘除あるいは、約8-10㎝程度の小切開にて腎摘出術あるいは腎部分切除術を施行しています。

膀胱癌

早期癌に対しては内視鏡的切除術を施行しています。進行癌には膀胱全摘術と化学療法、放射線療法を病状に応じて施行しています。2016年より、高齢者の局所浸潤性膀胱癌に対して抗癌剤併用原体照射療法を施行し、膀胱温存療法に積極的に取り組み、良好な治療効果が得られています。
内視鏡の歴史が泌尿器科の膀胱鏡の発明に始まります。膀胱鏡はさらに発達して、電気ループで内視鏡的にいろいろなものを切除できるようになりました。
経尿道的切除術、TURといいます。膀胱癌は血尿があって、膀胱鏡で発見して、TURで切除できるようになりました。
しかしそうやって治療してもまた再発してきます。腎盂や尿管癌で手術しても、後になって膀胱癌が発生してきます。
そこで、これは尿路全体に癌が発生する状態になっているのだと考えられるようになりました。良性の乳頭腫ではすでに多発した状態で見つかることが多く、乳頭腫症といわれます。
尿路癌の診断に尿細胞診といって、尿の中に癌細胞を見つけるのが有力な方法になっています。
日常的に、癌細胞は膀胱のなかを浮遊しているのです。その癌細胞が新しい場所に着床して成長するのはむしろ当然のことです。癌はやはりひとつの細胞から始まるのだと考えられました。
昔は内視鏡の先端についた小さな豆電球の光を頼りに操作していたので、周りがよく見えませんでした。
しかし内視鏡が進歩しても医師たちは、どうせ再発するのだといって切除していました。これでは悪循環です。
浜松医科大学泌尿器科学教室の藤田名誉教授は癌の周囲をきれいに切除できるように、粘膜下注射法を開発しました(当院においても粘膜下注射法を応用して表在性膀胱腫瘍の治療に全力を尽くしています)。高濃度の非電解質液を注入すると粘膜がふくれあがって透明になり、ごく小さい癌がよく分かります。電気メスを使うので電解質は使いません。
TURにはもうひとつ問題がありました。TURによる播種です。TURをすると細かい癌の塊が飛び散ります。これが膀胱の壁に着床して大きな癌になるのです。
イギリスの有名な医学雑誌、Lancetに掲載されたのですが、日本の泌尿器科医師は、疑心暗鬼だったそうです。
しかし、対策はあります。 TURの最後に膀胱の内を念入りによく洗い出し、抗癌剤を注入する方法です。
1993年に藤田名誉教授は、TUR後の再発のほとんどは切除残しであり、播種による再発が1年前後に20%のひとに起きるというモデルを提出しました。2000年近くなって、ヨーロッパの実に多数の集計から、TUR直後に抗癌剤を注入しておくと術後1年前後に発生する約20%の再発が抑えられるということが証明されました。
残る問題、切除し残しといっても努力できるところは努力して、あとは内視鏡で見えない程度の小さい癌があるのですから仕方ないのです。これはBCG膀胱内注入療法などの免疫療法など別の方法を考えなければいけません。
ひとつの癌細胞から始まったというのでモノクローン説といいますが、この説が力を得たのはDNA鑑定ができるようになったからです。
癌細胞はもちろんすべてそのひとの細胞ですが、癌のDNAには変異があります。その変異がどこに起きているかで同じ系統の癌なのかどうかが分かるようになったのです。
Fujita K: Intravesical antitumor therapy immediately after
transurethral resection of bladder cancer. Intl J Urol 1:341-344,1994.
Fujita K: Submucosal injection of non-electrolyte solution before
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Fujita K: Submucosal injection as an adjunctive technique for TURBt.
Urology (Sofia) 4:40-43,1998

前立腺癌

確実に増加している前立腺癌を早期発見するために、前立腺腫瘍マーカー(PSA)の測定と前立腺生検を積極的に施行しています。当院では検診セン ターが PSA測定をルーチン検査として導入しているため、早期前立腺癌が増加しています。早期例の治療としては手術(前立腺全摘術)療法以外にIMRTによる放射線療法が導入され、より侵襲の少ない治療が可能となりました。一方進行癌(再燃癌も含む)に対しては内分泌化学療法、放射線療法を組み合 わせた集学的治療を施行しています。

副腎腫瘍

副腎の腫瘍は大別して2種類あります。腫瘍はあるけれども過剰にホルモンを分泌しない非機能性腫瘍と、腫瘍から前述のホルモンを分泌し過ぎる機能性腫瘍です。
原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)は、近年最も注目されている副腎疾患の一つです。PAを取り巻く状況は、ここ10年で一変しました。従来PAは稀な疾患と考えられていましたが、実際は患者数が極めて多いことが分かったのです。報告によって異なりますが、国内のPAの頻度は高血圧患者の3.3~10%前後。高血圧患者は国内に3500万~4000万人といわれており、PAの推定患者数は200万~400万人。特に治療抵抗性の高血圧患者の30~40%を占めると考えられており、PAは2次性高血圧の中で、最も頻度の高い疾患となっています。また、従来特徴的とされていた低カリウム血症の合併も近年では10~40%程度にしかみられないといわれており、低カリウム血症のないPAが多く見逃されていると考えられています。
これをうけて最近では、関連学会による診療ガイドラインの整備が進められています。米国内分泌学会は2008年、PAのガイドラインを作成。国内では日本内分泌学会が、臨床重要課題の1つとしてPAを取り上げ、「原 発 性 ア ル ド ス テ ロ ン 症 の 診 断 治 療 ガ イ ド ラ イ ン 」を2009年6月20日付で発刊しました。このガイドラインでは、PA発見に最も重要な最初のスクリーニング検査を担当して頂く一般医家向けと、専門性の求められる診断と治療を担う専門医療機関向けの2種類のガイドラインが作成され、適切に効率よくスクリーニングと確定診断を行うことを推奨しています。これによれば、一般医家で積極的に行う一次スクリーニングは、初診の全高血圧症例でPACとPRAを測定し、PAC/PRA(アルドステロン/レニン比:ARR)を調べることとされています。PAが疑われれば専門医療機関へ紹介し、確定診断のための負荷試験が行われます。カプトプリル負荷試験、フロセミド立位負荷試験、生理食塩水負荷試験のいずれか2種以上を行い、PAが確定診断されます。その後、患者が手術を希望する場合は、CTや副腎シンチグラフィ、副腎静脈サンプリング(adrenal venous sampling : AVS)で局在を評価して、一側性であれば通常腹腔鏡下副腎摘除術の適応となります。 ただし、術後すべての患者で降圧薬が不要になるわけではなく、高血圧の病歴が長い症例や、臓器障害を合併した症例、肥満者では完治しづらい傾向にあります。また、対側副腎にPAが潜む可能性もあり、副腎切除術後も注意して経過観察することが重要です。
一方、病変が両側性だった場合や、外科手術を希望しない場合は薬物療法を行うことになります。抗アルドステロン薬や必要に応じてCa拮抗薬などの降圧薬を組み合わせます。
なお、国内では日本高血圧学会も「高血圧治療ガイドライン2009」
の中で、内分泌性高血圧の1つとしてPAについて取り上げていますが、1次スクリーニングの対象や、病変の局在を判定する方法などについては、日本内分泌学会のガイドラインと一部異なっています。例えば、局在の評価方法にAVSを必須としておらず、CTや副腎シンチグラフィなど各施設で実施可能な検査を行い総合的に判断するとしています。AVSは、高度な技術を必要とし限られた施設でしか実施できない検査であるため、より国内の実情を考慮したガイドラインとなっていると思われます。欧米でも、AVSに関して、精度や安全性・検査費用などの側面や、CTや副腎シンチグラフィとの正診率との比較を理由に、AVSをPAの局在診断のゴールドスタンダードとすることに懐疑的な意見も存在するようです。今後もより各学会が協同しあってより統一されたガイドライン作成が必要といえるでしょう。
PAは大半が高血圧のみが特徴で特別な症状を示さない場合が多い病気です。高血圧に隠れたPAの存在を見逃さないためには、患者さんおよび医療者の双方がこの病気の存在をまず疑ってみることが非常に重要なことだと思われます。
 
  1. 非機能性腫瘍
     この腫瘍は人間ドックなどの検診や他疾患の検査中に偶然発見されるものがほとんどです。偶発性腫瘍ともいいます。この腫瘍が見つかると、まず内科的にホ ルモン分泌の異常がないかどうか調べます。非機能性と判明しても直径が3 cmを越える場合には副腎癌(後述)を疑って手術をするのが一般的です。非機能性腫瘍の中には内部に水分を貯めて袋状になった副腎嚢胞のかたちをとるもの もあります。このような非機能性の副腎腫瘍は、報告によれば全人口の1.3〜1.9%近くに存在するとも言われ、全例が治療の対象となるわけではありませ ん。
  2.  機能性腫瘍
     これは全て治療の対象となります。多くは高血圧や糖尿病を主症状として内科を受診、その検査の過程で判明します。高血圧には一般的な本態性高血圧(原因 不明)の他に、この副腎腫瘍のように原因があってそれに付随して生ずる二次性の高血圧があります。50歳前から降圧剤の内服が開始となった方や、何種類も の降圧剤を服用しても血圧がなかなか下がらない方は内科の主治医に相談して一度副腎を調べて貰うことをお勧めします。

    コルチゾール過剰
    副腎腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌されるのがクッシング症候群と呼ばれる疾患です。高血圧や糖尿病、肥満、満月様の顔立ち、毛深くなる等の症状が出てきます。女性に多い疾患です。

    アルドステロン過剰
    アルドステロンが過剰に分泌されるのが原発性アルドステロン症です。50歳前から発症することが多く、脳出血等の合併も多いので要注意です。当科でおこな われる腹腔鏡下副腎手術の半数以上を占めています。潜在例を含め、本邦には100万人以上のアルドステロン症患者がいると推定されています。最近、 CTなどでも発見できない数mm径の微少腺腫によるアルドステロン症が診断できるようになり、症例が急増しています。

    アドレナリン分泌過剰
    髄質由来の腫瘍からアドレナリンが過剰に分泌されると血圧が200を越えることも希ではなくなります。心臓の拍動も早まります。褐色細胞腫という疾患で す。普段は正常血圧でも体外からの刺激(運動や採血等)で発作的に血圧が上昇することもあります。約10%は組織学的に悪性(癌)の像を示します。また腫 瘍が副腎以外にも多発することもあります。
副腎皮質には癌が出来ることもあります(副腎癌)。副腎皮質原発の癌はホルモンをほとんど分泌しないものもあれば、コルチゾールを過剰分泌してい てクッシング症候群としての症状を示すこともあります。一般的に副腎癌は発見されたときにはサイズが大きい(5 cm以上)ものが多いです。

副腎腫瘍の治療

機能性腫瘍の場合、手術により腫瘍を摘出するのが最も勧められます。
当科では副腎腫瘍のほぼ全症例に腹腔鏡手術を施行しています。少数例ですが、以前に腹部手術等の既往があったり、また腫瘍が大きすぎる場合などは、従来の開放手術で対応しています。
手術後に全ての症例の高血圧が治癒するわけではなく、高血圧の治療期間の長い患者などでは手術後も降圧剤が必要な場合があります。

副腎腫瘍の患者は、それまでは副腎やアルドステロンという言葉を聞いたことがない方がほとんどです。ただ薬を服用しているだけで痛くも痒くもない、こう いう方々にこそ副腎腫瘍という病気の内容、そしてなぜ手術を受けた方がよいのかを理解していただきたいと思います。
当科は副腎腫瘍の診断および治療において内分泌内科との密接な協力体制の下に副腎疾患の治療拠点を形成しています。副腎腫瘍はある程度待てる疾患です。治療の必要性の有無やその内容についてじっくり考えていただきたいと思います。
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